山仕事

 冬は山仕事で鍛えます。天候が優れない日は、チェンソーの目立てなどを学習します。寒いのでストーブの前で作業しますが、このような基本を大切にしています。

 最近はモーターの目立て器が売り出され、理屈を知らなくても一定程度までは刃を立てられます。しかし堅い木に向ってみると、直ぐに切れなくなるように感じます。鋸刃は左右に開いて切れるのですから、例え目立て器であっても、ヤスリを入れる角度など理屈を知った上で、指先を使った繊細なテクニックが必要です。

 目立てが上手にできると、大根を切るように良く切れます。大きな切りくずが排出され、チェンソーのバーがどんどん木に食い込んでいきます。刃が悪くなると切りくずが粉の様に小さくなって排出されますから、この切りくずで目立てのタイミングを計ります。

 難しい講釈をしているところに、知人のSさんに連れられて若い女性訪問客です。白石みきさんと紹介を受けました。世界ふしぎ発見でミステリーハンターとして活躍中とか。カメラ・水泳・マラソン・乗馬・ピアノ・書道など多才なお方だそうですが、気さくな女性で一緒に写真を撮りました。開所以来、12月までで約500人ものお方に視察などお越し頂いていますが、芸能人は初めてで、いくらの郷は面白いなあと自負した所です。


 新人のI君はユンボの免許を持っていて、とても上手に使います。薪ストーブの薪づくりに集材作業を行いました。山は斜面が多く作業が難しいので、平地の作業道まで引き上げ、玉切りします。

 雪がちらつくような寒い日ですから、たき火をして暖をとります。サツマイモを放り込んでおけば、休憩時間には美味しくおやつが頂けます。

小さい時からの経験ですが、山で弁当などひろげると、何故か家で食べるよりも随分と美味しいのです。体を使っているからでしょうか、森の空気が良いからでしょうか。とにかく食べるものは美味しく、気持ちにも張りが出てきて元気が出ますし、疲れても爽やかです。


 良く目の詰んだ40㎝以上の山桜で、水田が日陰になると言う事で伐採しました。材料を遠慮なく使い、厚さ5㎝以上のテーブルとイスに加工しようと計画しています。女性スタッフも随分とお気に入りで、机を作りたいと希望され、一緒に制作して頂くようにしました。

 喜んで巨木を抱きしめたり、乗ってはしゃいだりして子供のようです。木霊を感じているのでしょうか。巨木には人間が持って生まれた自然人としての目覚めを起動させる力があるようです。2人とも巨木を抱きしめると気持ちが良いと、目を輝かせ、お歳を感じさせない感激振りでこちらも嬉しくなりました。


 冬は冬で美しい大山です。夜はスキー場の照明が輝き、スキーにおいでと誘われます。車で僅か30分でゲレンデに着く立地ですから、近年は孫を連れて年に1度は滑っています。


 シイタケ菌もナメコ菌もホームセンターなどで手に入ります。直径10㎝×長さ90㎝程度の原木なら、直径の3倍~4倍の種駒が必要です。原木の元は40㎝もあったので、1本で150駒位を打ち込みました。

山林作業には発電機が必需品です。電動ドリルで穴あけをしますが、縦には20㎝くらい間隔で、横は菌が回りにくいので4~5㎝間隔とします。

菌は種駒に良く発生していますね。白が正常で、黒くなったり青くなったものは菌が死んでいる場合があり、打ってはいけません。


 種駒の打ち込み作業は11月~4月頃までの間で、原木の玉切り作業後にできるだけ早く行います。この原木は11月に伐倒して葉干ししていましたので、1月の打ち込みは理想的だと思います。ドリルは種駒と一緒に売ってありました。直径9・2ミリでストッパー付です。先端に空洞ができますが、菌の回りが良いとの事です。


 原木は重いものですから、土の上に直接置かずに、下に必ず小さな木を入れて隙間を作っておきます。コロコロと押したり、片方を持ち上げて起こしたりするのに欠かせない技術です。

 一人はドリルの穴に種駒を入れ、他の一人は金槌で打ち込みます。穴を見失うこともありますが、美味しい空気を胸一杯に吸い込んで、おしゃべりをしながら楽しい作業です。

菌を植えこんだ原木に木の葉などをかけて梅雨ごろまで仮伏せし、菌の蔓延を促進します。その後、本伏せし、二夏経過した秋からシイタケが生えてきます。ナメコは今秋には生えると思います。


 原木は辛い思いで大きくなりました。

索道の元付に使われたワイヤーが放置され、それを食い込んで大きくなりました。早く救ってあげたいとの思いで、お詫びをしてから伐採に取り掛かりました。周囲の木の枝に支えられ、中々倒れません。だるま落としのように危険な作業を繰り返し、ようやく伐倒できました。怒っていたのだと思います。


 幼少時、父に連れられ近くの炭焼き小屋で寝たことを思い出しました。

その当時から既に生えていて、子供の時にはカブトムシの良く取れる木でした。わが子には木を蹴らされました。蹴るとカブト虫がボトボトと落ちてくるのです。今は孫の付き合いですが、蹴ってもびくともしません。100年も経ったのでしょうか。

思い出の一杯詰まったクヌギの巨木が残って、我が家の営みを見つめています。

 


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