雨乞いの田植え

 いくらの郷地域は、5月になってから雨らしい雨が全く降りません。今年の冬は暖冬で雪が少なかったことから、水不足を予想していましたが、案の定、5月の田植えの時期に水不足となりました。源流域のいくらの郷地域は山から流れ出る谷水が農業用水ですから、豊作を願う前に先ず雨乞いが大切です。

 入蔵集落には「てんのうさん」と呼んでいる小山の古い社に、祇園さん(現京都八坂神社)、岡山の木野山神社が勧請されています。調べてみると何れも水に縁のある水神、龍神の神様です。大昔から農業に欠かせない水の恵みに感謝し、敬虔な気持ちでお祈りしていたように思います。皆で手を合わせて、雨乞いや豊作祈願して、今年の田植えが始まりました。

 いくらの郷の前田に、もち米を植え付けました。3a位の小さな田ですが、高齢のご夫婦から依頼され、耕作放棄するわけには行かないので引き受けたものです。

 研修生のK君は田植え機は初めてですが、乗ってみることとしました。

 田植え機は初めてで、おっかなびっくりで動かしていますが機械は正直で、いつの間にやら植え付けが完了しました。プロは前を見て植え付けますが、K君は後ろが気になって仕方がないようです。真っ直ぐ植えるコツは遠く先の目標に合わせて機械を操作します。下を見れば必ず曲がりますから、ここにも何かを達成するための人生の秘訣があるようです。

 1年に数日しか使用しない田植え機ですから、所長は操作が下手で、欠株が連続的に出たりしますし、苗のつなぎの部分が空いたり、重複して始末が悪いので植えなおしに入ってもらいました。

 御覧の通り、屈んでの作業ですから腰が痛くなります。加えて土が粘って田植え長靴を引っ張りますから、前に進むのも思うようになりません。水が豊富にあれば靴も楽に抜けるのですが、水不足は色々なところに影響が出るのです。

 つらい作業ですから、一人では嫌になってしまいます。世間話をしながら作業を進めますが、手を休めてふと見上げれば、若葉に囲まれた源流域棚田の美しい風景が目に入って疲れを癒してくれます。

 遠くにはいつも大山があって、自らの生き様を問いかけ、人生を律する良き師として、大切な役割を果たして貰っています。人生の色々な局面で問いかけ、間違いのない方向性の大局観を頂きます。日常生活の瑣事について、反省し許しを乞い、やり直しの勇気を頂き・・・・絶えず教えを受けてきました。

 田植えの合間に、K君に手伝ってもらって夏野菜を植え付けました。K君は家で野菜作りのお手伝いをしていたようで、間隔、植え付け深さなどよく知っています。色々な体験をたくさん積んで我がものとなり、それが世間で通用すれば、生きる力や自信に繋がって行くように思います。いくらの郷で行う指導の基本的な考え方です。

  町内一斉清掃が6月2日に予定されており、いくらの郷スタッフで事前に町道の草刈り奉仕を行いました。K君も刈払い機の使い方を覚えて参加しました。しっかりと汗をかきますから、「気持ちが良くて夜も眠れます」と笑顔で話してくれました。


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