令和第1号の研修生

 集落のご婦人方が、今年もカリカリ梅の生産に取り掛かりましたが、梅が無くて困りました。いくらの郷地域は梅の木が多い処ですが、今年は花の時期に寒波が来たり、霜が降ったりして、思うように実を付けなかったようです。昨年は豊作でしたが、シソが無くて苦労しました。農業は自然相手ですから、毎年何かがあって思うようにいかないものです。

 大梅をきれいに割ったカリカリ梅の材料です。昨年は全国の老人ホームのネットワークで購入して頂きましたが、美味しいと評判で、60万円余の売り上げを記録しました。

いくらの郷は若者支援と地域活性化の両輪で活動しています。若者支援も地域の協力が無ければ成果が上がりません。年金プラス数万円程度の小さな経済を作って、回していくことをセットで考えています。

 4月より日野郡から通っていたK君は、5月に休止扱いとしました。車で40分以上かかりますから、疲れたのだと思います。心くばりの行き届いた優しい青年でした。

6月から新人のN君がお試しで通っています。この時期ですから草刈の基本から指導しましたが、真面目にノートを取って真剣に学びました。きちんと向き合えば必ず心に届き、喜んでくれて信頼関係を築くことが出来ます。

 新人スタッフのTさんも一緒に学びました。2サイクルエンジンの構造、刈り払い機が回転する原理、グリスを給油する日常のメンテナンスまで、事細かに指導しました。

 何歳になっても学びは楽しいもので、その都度に新たな発見があります。指導する方も事前にネットで調べますから、自信を持って説明できますし、質問にも的確に答えられます。

 早速、現場で実践です。N君は刈り払い機を使った事はあるものの、具体的な方法は身に付いていません。丁寧に指導すると素直に聞き入れて、直ぐに上達しました。右から左に刈り払いますから、最初に刈る方向や位置の設計をしなければなりません。また、刈った草を家畜飼料として利用する場合など、後の機械操作に合わせた刈り方があり、草刈も案外難しいものです。

 Tさんはリズムがあって実に上手に刈っていきます。肩掛けベルトの調整も小刻みに行うなどして、早いのに刈り後がきれいです。先を行くKさんは家でも戦力でやっていますから、文句なしに上手に刈れます。この日は大きなマムシを見つけました。所長の「どこまでも追いつめて必ず仕留めなさい」と言う指導を忠実に守り、本来の姿が確認できないくらい、刈り払機でズタズタに刻んで仕留めました。さすが姐御で伊達に歳は取っていません。

 N君に薪割りの指導をしましたが、センスは良さそうです。ただ腰が高いと思います。基本は股を拡げて、神経を集中して薪の真ん中を見定めて斧を打ち下ろします。この時、腰が高いと薪から外れた時に斧が足の方に向かってきますので、万一外れても安全なように手前に木を置いています。

 指導後には腰を落として打ち込んでいます。斧は約3キログラムあって結構重いのですが、上手に振り上げて薪の真ん中に打ち込んでいます。所長は一撃で割ろうと言う思いが強く、左利きで少し左に打ち込んでしまいますから、所長よりも上手になるでしょう。

 4月からの新人スタッフTさんも薪割に挑戦しました。Tさんは気持ちが前向きで何にでも挑戦しますし、有能な女性で直ぐに上達すると思います。これは最初の写真ですが少し腰つきが悪いようです。

 しばらくするとこんなに上手になりました。講習会に行くと斧の重さに任せ、力を入れない様に教えられますが、それだけでは中々割れません。運動エネルギーの大きさは斧の重さが一定ですから、速度を早くすれば大きくなる理屈です。(公式はK=MV2/2)斧は回転運動をしていますから、薪を外れた場合には自分の足の方に回ってきます。怪我がないように「膝を折ってー腰を落として」と指導しています。

 研修生N君は 、薪割2回目になると随分と上達しました。写真では膝をしっかり折って腰を落とし、真中に打ち込んで上手に割っています。所長の姿より立派です。

 スタッフKさんはベテランで見ていて安心感があります。カメラスタッフですから紹介が少ないのですが、何の課題に対しても所長の良き相談相手で、心強いパートナーです。小振りでもパワーがあって精力的です。お口もお上手で研修生をその気にさせる名人で、皆さんから頼りにされています。

 薪にも個性があります。木の切断面に割れ目が出来ていますので、その割れ目に沿って割ることが基本です。しかし「木の又」になった材は簡単に割れませんが、ストーブで燃やす段になると、火持ちが良くて重宝します。そこに薪割の研究・技術練磨の面白さがあります。研修生にも一人一人に個性があり、その個性を前向きに受け止め、個性を活かす事を考えながらサポートしています。薪割の難しさと同じです。

 軒下で乾燥させますが、両端は素性の良い割り木で井桁積みをして、荷崩れを防ぎます。間には小径木で丸いもの、曲がったものや割りきれなかった木の又部分などを、適当に組み合わせて積んでいきます。

いくらの郷のサポートスタッフは、崩れそうになる両サイドを固めて、真ん中に個性ある研修生を分け隔てなく受け入れて、全体として積荷の様に調和のとれた運営を目指しています。


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