修学旅行

 5月14日よりいくらの郷へ通ってきた2人の研修生が、12月より社会復帰のための職場体験実習を「社会福祉法人祥和会」で行うこととなりました。そこで半年間の苦労を共にしたスタッフと共に、仕上げとして修学旅行を計画しました。行先は熱海にあるMOA美術館と、不登校児童などを対象に同じような取り組みをされている大仁農場のMOAスクール、そして紅葉の美しい箱根美術館です。


 11月24日、待ちに待った修学旅行、良い天気に恵まれました。車で熱海まで向かいますが、交通安全を祈りながらも、車中では笑い声が絶えず夕方には無事に熱海に到着しました。修学旅行生がお酒を飲むというのは少し違和感がありますが、懇親会を賑やかに開催し、明日の英気を養いました。

翌25日、小春日和の素晴らしい天候に恵まれ、熱海の海がキラキラと優しく歓迎してくれました。

 最初にご案内していただいたのが水晶殿。美しい相模湾に浮かぶ伊豆半島や遠く大島、左には三浦半島、房総半島などを望む絶景です。屏風絵の様で、しばし無言で風景に見入ったことでした。

 MOA美術館入口。尾形光琳の紅白梅図屏風など国宝3点、重要文化財66点を含む約3500点を所蔵する海の見える美術館として有名です。現在は54名の人間国宝の作品展開催中で、どんな出会いがあるのか期待が高まります。

 入口を入ると長いエスカレーターが、天上に行くのかと思わせる様に少し暗い中を上がっていきます。エスカレーターが参観者を俗世から遮断して、一気に芸術の世界に導きます。全部で7基、200m以上の延長だそうです。

 大型の万華鏡。同じ模様は2度とみることは無いそうです。次々と変化する模様に、大きなホールでしばし休んで不思議な感覚を味わいます。まるで宇宙の中を旅しているようです。

 エスカレーターを省略して外に出てみました。明るい陽光の中に、美術館の荘厳な建物に良くマッチしたブロンズ像が、2人仲良く座って輝く熱海の海を眺めています。

 MOA美術館は素晴らしい眺望の熱海の海を眺める高台にあって、その高低差をうまく利用されています。下界から天空の聖地に上るにつけて、身も心も徐々に清められ、高貴な芸術を鑑賞するに値する資格が、自然に身に付く様な気分です。

 美術館と言っても館内には能楽堂が設備されています。建物は西洋建築でも、中は日本文化の粋を集めています。

熱海市の成人式が行われるそうですが、成人の記念をこのような文化の中で迎える熱海の人々の幸せを思いました。地域が丸ごと癒されるでしょう。

 秀吉の黄金の茶室です。正親町天皇をお迎えしての茶会用に、大阪城内に作らせた茶室を復元したそうです。

 重厚な能楽堂や黄金の茶室を見た後は、遠く大島が浮かぶ相模湾や、きれいに手入れされた庭を眺めて心を鎮めます。高ぶった人の心を落ち着かせる美しい自然があります。工夫があります。

 じっくりと人間国宝展を見た後は、昼食会場である光琳屋敷の花の茶屋に向かいました。もみじが美しく色づき優しく迎えてくれました。ワインを醸造してブランデーが出来る様に、美しい自然が昇華して芸術を作るのであろう等と考えて、人間国宝展の余韻が収まりません。

 豊かな素材で美味しく調理された料理で、お箸をつけるのがもったいないようです。お膳に自然を再現してあり、これも芸術ですね。

 午後は農医や農福連携、自然農法の大仁農場に向かい、欅の大木に出会いました。

水を吸い上げる音を聞くための聴診器が用意されているようですが、セラピーと言うのでしょうか、年齢的にも少し傷みが来かかった理事長と所長も、安心感と力を頂き癒されました。

 自然農法の立派な野菜が育っています。

 不登校の子供たちを支える活動をされているMOAスクールの農地です。日頃の活動を紹介していただきました。ささやかな農地ですが、小さな葉物が精いっぱい生きて育つ姿が教訓になり、心の癒しになるようです。

 後方の民家は雪どころ新潟からの移築物件。大仁の自然にマッチして、ここに集う人の心の拠り所になっているようです。

 昔懐かしい農具です。荒起こしをした大きな土の塊を砕くための「干し田めぎ」がコーナーにあります。重石代わりに載せられて、グラグラ揺れながら子守をされていた記憶が蘇ってきました。若かった父や母、暑い夏の農作業、皆が満面笑みだった収穫の喜びの顔・・・・古い農具には暮らしの思い出が詰まっています。センチメンタルな気持ちを呼び起こし、荒んだ気持ちをコントロールする力があるようで捨てがたいものだと思いました。

 農家の軒先から隣の農家が写っています。庭には石を置いて自然を我が家の庭に引き寄せ再現しています。自然に統一しよう、自然と同化しようとしてきた日本人の魂のありようが、さりげなく表れています。

「引き寄せて結べば柴の庵にてとくればもとの野原なりけり」を思い出しました。

 遠くには富士の山。啄木は「一握の砂」の中で

「ふるさとの山に向ひて言うことなしふるさとの山はありがたきかな」と詠みましたが、富士山に向かってはその神々しさに何もいう言葉はありません。

ただ美しさにひたすらありがたく、感嘆するばかりです。

 箱根美術館に行きました。コケに覆われた庭にモミジが美しく映えて、過ぎゆく秋を楽しむ観光客で賑わっていました。

 良く手入れされた竹林です。いくらの郷の竹林は荒廃に任せた厄介者ですが、このように見せれば違った趣があり、芸術や文化を感じさせますので、やはり人次第と言う事でしょう。

 美しい日本の秋、箱根を後にして帰路につきました。様々な作業などで過ごした6月を終えて実現した修学旅行でしたが、豊かな自然に育まれた芸術、文化に触れて、心も満たされて有意義な3日間だったと思います。


S君の感想

 11月24日から26日の日程で熱海、箱根へ修学旅行に行ってきました。熱海に行く途中で理事長が名古屋市街を通ってくれて、名古屋に住んでいたころの思い出に浸ることが出来ました。MOA美術館では仏像の今にも動き出しそうな迫力に圧倒されました。MOAスクール大仁校では、敷地の広さにびっくりして、この自然に利用者のお方は力をもらっているのではないかと思いました。自然の中で作業をすることで元気になるというところは、いくらの郷と同じだと思います。

箱根美術館ではきれいな日本庭園に癒されました。

久しぶりの旅行で不安もありましたが、いつものメンバーと一緒だったので楽しい修学旅行になりました。


Y君の感想

 修学旅行の思い出ー修学旅行に行くまでは、人が多い場所や集団行動に不安がありましたが、熱海に向かうにつれ、不安がなくなり、富士山の美しい姿や熱海の街並みなどの景色に、心癒されました。翌日はMOA美術館や大仁農場の見学に行きました。MOA美術館の水晶殿から眺める景色は時間を忘れさせてくれ、心が落ち着きました。美術館内の万華鏡も、時間があれば1日中見ていられる位美しく、不思議な魅力がありました。

大仁農場では、濃厚なソフトクリームを頂きました。新潟の古民家や農園など、大勢の方たちの熱い想いが、ほんの少しでも理解できたと思います。箱根美術館では、とても綺麗な苔庭を見て物凄く惹きつけられました。

また違う季節にどんなに美しいか気になります。


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