遷宮

 げぎょ(懸魚)と言います。社の飾りに見かけますが、災難を除く意味合いがあり、研修生N君がインターネットを参考にして彫刻しました。

移動で壊れるといけないので、最後に取り付け完成です。

 いよいよ11月13日を迎えました。今日は待ちに待った遷宮の大切な1日です。雨80%の予報だったので、急遽テントを張り万全の態勢で臨みました。ところが雲の切れ目から陽が射すような、予報とは打って変わった天候に恵まれました。湯立神事を行います。グラグラと沸かしたお湯に竹の葉を差し込み、そのお湯でお清めします。遷宮をされる新宮まで行って内外を清めました。

 役員は正装で参加しました。心の中では雨が心配で、早く、早くと急(せ)いています。神主さんは至って悠長なもので、祝詞を長々と上げておられます。

 尚、ご神体は古い祠から10月中にお忍びで、公民館の床の間に仮遷宮してあります。

 実は翌日の雨予報を心配して、神主さんの指導で二つのご神体を新しいお宮さんに遷宮して頂いたのです。従って本日は祇園神社一体のご神体に、遷宮して頂ければ良い事になっています。公民館の仮住まいから、新しいお宮に移っていただきます。

 白い布は布垣と言って、布で目隠しをして進みます。見せ物ではないということでしょうか。本当は夜に松明を焚いて、道にはコモを敷いて遷宮するものだそうで、布垣で囲う位は夜にすることを思えば何でもありません。

 

 ご本尊様には新調の木箱に入って頂き、布垣で絶えず覆って移動するのです。ご神体にも白布が掛けられ、公民館から神社までは神主さんの自動車で移動して頂く事になりました。

 皆さんがお札など関係するもの1品づつ持って移動します。

 公民館から三嶋神社まで、榊を持ったいくらの郷の指導員の勝部さんを先頭にいざ出発です。

 

「なぜ私が先頭なのですか」と疑問が湧いたそうですが、コロナや仕事の都合で出席できない家もあり、思ったよりも少ない人数で対応しなければなりません。神様も女性が好きだからとかなんとか言って、先頭を歩いて頂きました。

 三嶋神社に到着しました。

 布垣で囲って「オー」という掛け声を出して進みます。非日常的な光景ですから皆さんが緊張して、しくじらないようにと気を張っています。 

 無事に境内に到着しました。相変わらず天候には恵まれています。

 布垣で囲い、その中で新宮に移動して頂きます。新宮の中にもカーテンを引いて、見えないように吐息がかからないように、見下ろさないように、とにかく慎重に慎重に遷宮して頂きました。

 

 滞りなく三神が納まりホッとしました。早速ご神酒を注ぎ、先ず神様に飲んでいただきます。

 

 

 

 

 

 笛や太鼓のお囃子で、無事に遷宮できた喜びが湧いてくるようです。野菜、果物、お米、お酒など、三宝一杯のお供え物で、神様もさぞ満足していただけたと思います。

 神主が祝詞を奏上されました。よく聞いているとこの度、遷宮をするに至った経緯を滔々と述べられる中に、「いくらの郷」も登場してきて、神道も良いものだなあと思ったことでした。

 古い祠は文化2年(1805年)にどなたからか寄進され、新しくなった事が石柱で判明したのですが、思えば200年ぶりに新調になったわけです。歴史的な場面に関わらせていただいた喜びを感謝して、二礼二拍手一礼でお祈りしました。

 山野伯耆の国理事長も代表して玉串を捧げています。いくらの郷の運営を受託していますが、余裕があってやっているのではないのです。人を育てることに投資しているのですから、大したものです。                                                                   

 研修生のN君も玉串奉奠をしました。今日はお母さんも駆け付けて、遷宮を祝って頂きました。立派に成長したわが子の姿に、喜びも一入だったと思います。今日はスーツ姿にネクタイですから、まぶしい程の良い男振りです。神のご加護で良い人生を過ごすことを、願わずにはいられません。

 村口自治会長も、無事に遷宮の儀式を終えた事に喜びも一入でしょう。

2人で万感の思いをもって紅白餅を撒きました。


 直会(なおらい)の席です。最初に所長から村口自治会長に、祠の引き渡し式をしました。以後は部落の管理となるのですが、安堵と同時にほんのちょっと寂しい思いもしました。

 村口自治会長よりN君への感謝状の贈呈が行われました。記念品も添えて手渡しされました。この後N君より謝辞があり、所長や遠藤大工、部落の皆さんの助けで完成させた旨の話で、熱い、そしてさわやかなあいさつで、万雷の拍手を受けました。

 テレビのインタビューを受けています。自信に満ちた誇らしい顔で堂々としています。お隣は遠藤大工さん。寒かった時期、暑かった夏の日など思い起こして感慨一入だったことでしょう。通い始めて1年が経過しますが、以前の姿は想像がつきません。立派に成長してどこに出しても恥ずかしくない青年です。直会の最中に雨足が強くなりました。神様のお陰とは凄いものですね。

 遷宮に副区長のお孫さんが姿を現しました。高齢化、人口減少する一方の入蔵集落にあって、赤ちゃんの姿は未来につなぐ希望の光です。すくすく育って、やがて父のように、祖父のように入蔵を守って欲しい。

遷宮をした今日の灯を、次に繋げて欲しいと皆さんが願ったことでした。


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